2018/04/01
日本建築の美しさ、瓦の役割
建築における屋根瓦というものは、とても大切なものです。建物の天辺を構成する部分として、建物全体を雨風から守る機能があるからです。
現在の建築では防水陸屋根が相当量を占めていますが、日本の多雨多湿気象や寒暖の変化の大きい気候を考えると、どんなに防水技術が発達しても長年にわたって絶対に雨漏りしないという保障はありません。しかも万が一雨漏りを生じた時に、簡単にこれを補修するのは難しいです。これらのことから、日本の建築が雨水のはけをよくするために、屋根に勾配をつけることは必要なことなのです。日本の屋根には、軽量を目的とした銅板・長尺鉄板、化学製品のシングル・カラーベストなどがあり、その他には桧皮・杮・藁などの木製や植物性もあります。しかし保温断熱の機能を持ち、雨漏り補修が簡単にできるのは屋根瓦なのです。
瓦工事において、建築と屋根瓦の調和を考えて葺くことができるのが一番の理想と言えます。屋根瓦の色は、施主の好みなどが入ってきますが、住宅建設ラッシュの昭和40年から50年にかけてはモダンな青緑色の釉薬瓦が多く見られましたが、その後落ち着きを取り戻し、いぶし瓦、またはいぶし瓦に似たシルバー釉薬瓦へと移っていきました。
いぶし瓦は日本においては1400年の歴史を持ち、長い間日本の風土に染み込んできた色であります。いぶし銀のようなにぶい色は、多雨多湿で深い青空が少なく、ヨーロッパのようなキラキラとした太陽の日差しの少ない日本の空にマッチしていたのだと思います。
いぶし瓦の色は、他の色瓦のように焼いた土の色でもなければ、釉薬の発色でもなく、土の肌に微細な炭素が無数に突き刺さり、それらが乱反射していぶし色に見えるものです。またこれらの炭素の微粒子が、雨水の流れの中で徐々に洗い流されて灰黒色に変色して、深い味わいをもった渋い黒色になっていきます。釉薬瓦にも、鮮やかで華麗な力強さがあります。しかし日本人の心のそこにある侘び、寂びを粋と感じる心や歴史のなかではどうしても渋いいぶし瓦に自然と心惹かれるのも、おかしくないでしょう。時代は移り変わり、気候も変化していき、昔ほど伝統的な日本家屋というものも少なくなってきました。しかしそんな世の中だからこそ、瓦屋根の美しさに目をむけ、日本の建築の中にいつまでも瓦屋根が生き続けてほしいと思うのです。